「死ぬまで青春」を生きる。
- 西原咲

- 7月4日
- 読了時間: 3分
パリの夏至の夜と、直島で見た「最高の笑顔」
前回の記事では、サッカーの熱狂から
「人はロジックではなくパッションで動く」というお話をさせていただきました。
今回は、パリの街全体がアートの舞台となる一夜限りの現代アート祭典
『NuitBlanche(白夜祭)』での体験から感じたことをシェアさせていただきます。
夏至の夜の22:30、
私は安藤忠雄氏が再生を手掛けた現代美術館
『Bourse de Commerce』へと向かいました。
ここは、安藤氏がパリ市の反対を5回も押し切って、
旧証券取引所内にコンクリートの円柱を入れて以降、
インスタレーション※の名所となっています。
建物に到着すると、そこにはチケットを持っていないけれど
「どうしても中に入りたい!」という人々で溢れ返り、
深夜前とは思えないほどの大行列ができていました。
並んでいるパリの大人たちを見渡すと、皆本当に楽しそうで、
まるで「お金と力を手に入れた20歳」のようでした。
中へ入ると、円柱が囲む巨大なホールに、
雲(霧)が出たり消えたりする幻想的なインスタレーションが広がっていました。

手掛けているのは、90歳超えの日本人女性アーティスト中谷芙二子氏。
彼女が雲のインスタレーションを初めて発表したのは
1970年の大阪万博だったそうです。
前があまり見えない雲の中で、
子供はもちろん、30歳の私も、
隣にいた70歳くらいの見ず知らずの大人たちも、
誰もが境界線をなくし、無邪気な子供たちになりました。
特に子供にとっては、
深夜まで五感を研ぎ澄ませてはしゃぎ続けられる夏至の夜は、
特別な思い出になるだろうと確信しました。
この建物の象徴であるコンクリートの円柱が
安藤氏によって作られたことは知っていたのですが、
「安藤建築」という言葉はヨーロッパでもあまりに有名です。
パリはもちろん、旅をする度にあらゆる都市で
彼の携わったプロジェクトを見かけます。
しかし、お恥ずかしながら、
私はこれまで彼自身の人物像について深くは知りませんでした。
あの夜の興奮が冷めやらず、
私はYouTubeで安藤氏の動画を夢中で見漁りました。
元プロボクサーという異色の過去、
独学で建築を学び、現場からの叩き上げで世界で最も有名な建築家の一人になったこと。
失礼ながら、コンクリートの静密な作風から「冷静沈着で知的な、お堅い方」だと
勝手に思い込んでいたので、良い意味でそのイメージを引っくり返されました。
動画の中で、彼がエネルギーに満ち溢れた大阪弁で何度も、何度も口にしていた言葉。
それこそが「青春」「死ぬまで青春」というメッセージでした。
その言葉を聞いたとき、私の脳裏に、ある大切な記憶が蘇りました。
日本の直島にある美術館も安藤建築ですが、
数年前、祖父と一緒にそこを訪れたときのことです。
美しい迷路のような安藤建築の空間を進み、
James Turrell(ジェームズ・タレル)の光のインスタレーションを見た瞬間、
祖父がまるで幼稚園児のような満面の笑顔を浮かべたのです。
「ああ、あれこそが、安藤氏の言う『死ぬまで青春』の姿
(まだまだ長生きしてください!)だったんだな」と、
すべての点と線が繋がりました。
皆様も祖父も私も今この瞬間を生きる「青春」の真っ只中です。
「死ぬまで青春」の心で打席に立ち続けましょう!

Photo by me ※インスタレーション 特定の空間や場所にオブジェ、映像、光、音などを配置し、
空間全体をひとつの作品として体験させる現代アートの表現手法。



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