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1,000色の色彩と城壁の中で過ごす夏。バカンスで知った「もうひとつのフランス」

執筆者の写真: 西原咲
西原咲
10月3日
読了時間: 4分

8月、パリの都市生活から少し離れ、

ノルマンディー地方の田舎町とブルターニュ地方のサン・マロに行きました。


旅のきっかけは、インターネットで見つけた一人のマダムです。

「ファームに生える植物から、1,000色もの色を生み出す」という

彼女のモノづくりに惹かれ、

ご自宅に5日間滞在させていただきました。


朝5時にパリの自宅を出発。

電車とバスを乗り継ぎ、約10時間、

山道を抜けて終点でバスを降りると、

目の前には海が広がっていました。


出迎えてくれたマダムたちは、なんとそのまま海に入れる水着姿。

「夏は夕方になると、毎日こうして泳ぐのよ」と笑う彼女たちの肌は、

ヘルシーな小麦色に輝いていました。


その日はちょうど、一生に一度出会えるかどうかという皆既(部分)日食の日。

夕方のビーチには、たくさんの人がひしめき合っていました。


「この海にこんなに人が集まっているのを見るのは初めて」とマダム。


手元を見ると、皆が薬局やネットであらかじめ購入していたという

紙製の太陽観察メガネを持参していました。


紙製の太陽観察メガネ
紙製の太陽観察メガネ

ビーチに腰を下ろしてボトルを開け、

マダムが作ってくれた美味しい夏の手料理をいただきながら、

日食をのんびり楽しむ。

忘れられない夕暮れとなりました。


翌朝、電波が届かない山小屋にて、鶏の鳴き声で目が覚めました。

マダムのワークショップを見学させていただいたり、

ガーデンの水やりをしたり、料理をしたり…。


フランスでバックグランドが皆全然違う人と食卓を囲った5日間、

今まではあまり得意ではなかったイチヂクですが、

庭にたくさん実っていたので、たくさん食べました。


イチジクとブドウ
イチジクとブドウ

木から完熟しているものをもぎ取ってかじるイチヂク、

貴族家系出身の女の子がお城の管理がいかに大変か話しながら

レシピを見ずにささっと作ったイチヂクのクッキー、

私が作ったシェブールチーズとイチヂクのタルト。


どれもとても美味しい良い思い出です。


ここで日々植物と向き合い、

土から生まれた色を紡ぎ出すマダムの姿を見ていると、

パリとは全く異なる、もうひとつの豊かなフランスの顔が見えてきました。


自然のバイオリズムに寄り添い、今そこにある季節の恵みを全力で味わうこと。

そして、限られた素材から無限の色彩(価値)を見出すこと。


新しい視点とインスピレーションを惜しみなく与えてくれる時間となりました。


ノルマンディーでの特別な5日間を終え、

向かったのはブルターニュ地方の歴史ある港町サン・マロです。


イギリス海峡に面したこの街は、イギリスとの距離が非常に近いこともあり、

驚くほど英語が通じる街でもあります。

(最近はパリでも数年前と比べて驚くほど英語が通じるようになりましたが、

サン・マロの英語の親しみやすさはまた格別です。

私のフランス語奮闘記は、また改めて書きます!)


サン・マロの最大の特徴は、旧市街(イントラ・ムロス:城壁の内側)が

中世の重厚な外壁にグルリと囲まれている点です。

サン・マロの旧市街をぐるりと一周囲む城壁は、全長およそ2km。

12世紀から18世紀にかけて、

外敵やイギリス軍からの防衛のために建設・拡張された巨大な花崗岩の要塞です。


城壁の上は遊歩道として歩くことができ、片側には重厚な石造りの街並み、

もう片側にはヨーロッパ有数の激しい潮の満ち引きを見せる

雄大な英仏海峡が広がっています。

よく晴れた日に城壁から眺める夕日はとても美しかったです。


ブルターニュ地方の歴史ある港町サン・マロ
ブルターニュ地方の歴史ある港町サン・マロ

かつてこの街は、フランス国王から

「敵国の船を襲って財産を奪う許可」を得た私掠船(コルセール=王公認の海賊)の

拠点として絶大な富を誇っていました。


私が対岸に向かう際に乗った船の名前が「コルセール」で、

海賊になった気分でした!


中世からそのまま保存されているように見えた美しい街並みですが、

実は第二次世界大戦末期の1944年、サン・マロの旧市街は激しい爆撃を受け、

街の80%以上が瓦礫の山と化して壊滅してしまったそうです。


しかし戦後、サン・マロの市民たちは現代的なビルを建てる道を選びませんでした。


崩れ落ちた花崗岩の石を一つひとつ拾い集め、過去の設計図を元に、

当時の姿とまったく同じ形で街を忠実に復元させたのです。


たとえ形が物理的に失われても、

その場所が持つ歴史やストーリーという「目に見えない価値」を信じ抜き、

膨大な時間と労力をかけて、アイデンティティを守ることは大事だなと思いました。


都市から離れた地方には、時間をかけて育まれた自然の循環と、

人々の歴史への深いリスペクトが息づいていました。


新しいものをゼロから作り出すことばかりに目を奪われがちな現代において、

真の豊かさとは、足元に眠る歴史や自然など「目に見えないアセット」を

いかに紡ぎ直せるかにあるのかもしれません。 もっとフランス(パリ)を知りたい! と思ったら…… ひとつ前の記事へ→世界最大級のスタートアップキャンパス ―Station Fなどに学ぶ、歴史的建造物の活かし方

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